日本における国民の祝日の名称の付け方には目安があります。
元日、憲法記念日、天皇誕生日のように
名称中に「の」の字がないものは、
その日付(1月1日、5月3日、12月23日)に固定的な根拠・意味合いが
あるものとなっています。
一方、成人の日、こどもの日、海の日、敬老の日など
「の」の字のあるものは、一応動機となる事実
(端午の節句や明治天皇帰港日など)はあるものの、
その事象自体は本来常日頃から行われるべきこと
(民法上成人となるのはその人の誕生日の前日であるし、
子供や高齢者や海の幸は時節を限らず慈しむべき対象と言える)です。
しかしながら年がら年中成人式などの行事をするわけにもいかないので
一つの日を選んで制定する、というように「固定的な意味」よりも
「特定の一日をその事象の代表的な日とする」という意味を
重視したものであることが多いのです。
2月11日が「建国記念日」でなく「建国記念の日」となっているのも、
「今となっては学術的に正確な建国日は諸説あり特定できないが
大昔に国家的体制始動の日はあったはずなので
一応2月11日にその役目を命じよう」というように
「代表的な日」の意味合いがあるからなのです。
ただし、春分の日と秋分の日は既に学術用語として
春分日と秋分日があったため混同を避けるべく「の」を挿入したものであり、
他の「の」入り祝日とは異なり
(天文学的な理由での日付移動があり形の上では固定的でない)
意味合いとしては固定的側面の強い祝日です。
昭和時代を記念する日を定める場合も、
もし名称を「昭和記念日」とするとなると
「昭和時代回顧のためにたまたま選んだ代表的な日」の意味よりも
「記念する根拠のある日」という固定的意味のある日を
選ぶ必要が生ずることとなり、
結果として昭和天皇誕生日である4月29日よりも
むしろ昭和に改元した12月25日のほうが適切である
(もしもこの日が祝日になれば、祝日法の規定により12月24日は休日となる)、
逆に律令の「国忌」規定以来の由来のある昭和天皇が崩御して
昭和時代の終わった1月7日の方が皇室の伝統とも合致する
(亡くなった天皇の誕生日が祝日になった先例は戦前に
存在した明治天皇の「明治節」(11月3日)のみである)、
更には終戦記念日(8月15日)こそ相応しい等々、
日付選定に関する推進勢力同士の論争を提起する可能性がありました。
一方、「昭和の日」であれば固定的な意味を持つ必然性が
(昭和記念日に比べれば)薄れるため、
4月29日を採用する是非についての推進勢力同士の論争
(=推進運動の停滞)を避けやすい結果となります。
当初「昭和記念日」を主張していた推進勢力が
「昭和の日」を受け入れた背景には、
このような「の」の有無という祝日名称の慣例が影響したといえるのです。

